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パーフェクト・トラップ

少し前に、フランスの小学校教師が6年生(11歳)の生徒に映画『ソウ』を見せ、
停職処分になるという出来事が報じられました。
フランスのレイティングだと、『ソウ』は16歳未満鑑賞禁止らしく、
それを11歳の子供に見せることは、たしかにルール上問題があるとは思いますが、
映画好きなボクとしては、面白いホラー映画を見せてあげたい気持ちはわかります。
『ソウ』シリーズの2作目以降は悪趣味なスプラッター映画なので、
あんな暴力的なものを子供に見せるのは賛成できませんが、
一作目はシチュエーションスリラー映画の傑作なので、
もしかしたら情操教育にいい効果があるかもしれないです。
…いや、それはいくらなんでも言いすぎですが、子供の頃から慣れ親しむことで、
ホラー映画ファンの裾野を広げるのには役立っているかもしれません。
ボクが小学生だったら、こんな先生は大好きになったでしょうが、
『ソウ』を見て気分が悪くなった生徒がいたために発覚したらしいので、
生徒を傷付けるようなことはやっぱりダメですかね。
アメリカではR指定コメディ『テッド』を小学6年生に見せた教師もしるそうですが、
お下劣な『テッド』に比べたら、『ソウ』の方が随分マシだと思います。

ということで、今日は『ソウ』シリーズの脚本家が監督したホラー映画の感想です。

パーフェクト・トラップ
The Collection

2013年8月23日リリース。
『ソウ』シリーズの脚本家マーカス・ダンスタンによるソリッド・スリラー。

友人に誘われ、少し怪しげな地下倉庫のダンスパーティに行ったエレナ。しかしそこは、殺人のための罠が仕掛けられた恐怖の館だった! 切り刻まれ圧縮され、一気に虐殺される人々。逃げ惑い箱の中に閉じ込められたエレナだったが、箱の中から恐ろしい光景を目にしてしまう。一方 父親は娘を救出するために捜査チームを組織、そこに“ザ・コレクター"のワナから生き延びたアーキンを招集する。“罠館"に向かうアーキンと捜査チーム。果たして彼らは“罠男"のコレクションの一部になる前に、エレナを救出することができるのか…。(公式サイトより)



来月中旬、あの殺人鬼ホラーの金字塔『悪魔のいけにえ』の正統続編が公開されます。
リメイク版の『テキサス・チェーンソー』の殺人鬼レザーフェイスではない、
本物のレザーフェイスが帰ってくるのが楽しみです。
ジャイソンを筆頭に、フレディ、ブギーマン、レザーフェイスなど、
1980年前後は印象的なサイコキラーが沢山誕生し、ホラー映画を盛り上げましたが、
近年はイマイチで、殺人鬼ホラーも過去の人気サイコキラーのリバイバルばかり…。
そんな中でも期待できるかもと思ったサイコキラーが、『ワナオトコ』の殺人鬼です。
本作はそんな殺人鬼ホラー『ワナオトコ』の続編となります。

『ワナオトコ』の続編なのに『パーフェクト・トラップ』なんて邦題付けられたら、
続編だと気付かない人もいそうで問題があると思いますが、
日本での販売元が松竹からTSUTAYA(系映像製作会社)に変わったため、
TSUTAYAとしては続編として売るメリットはないと考えたのでしょう。
むしろ続編と意識させないことで、前作を知らない客にも掴ませる戦略でしょうね。
でも物語も前作の直後から始まる完全な続編ものなので、その売り方は問題です。
原題も前作は『The Collector』で本作は『The Collection』なので、
邦題同様ナンバリングタイトルは使っていないんだけど、
この邦題はいくらなんでも変えすぎな気がしますね。
それに「ワナオトコ」はインパクトのある邦題だったけど、
「パーフェクト・トラップ」なんてB級丸出しのチープなタイトルだし…。

『ソウ』シリーズ4~7作目の脚本家が監督を務めた前作『ワナオトコ』は、
全米でもそれほどヒットすることができず、日本でもビデオスルーになりましたが、
一部のホラー映画ファンの間では、それなりに話題となった殺人鬼ホラーでした。
ボクも前述のように、作中の殺人鬼コレクターには可能性を見出したし、
作品自体もなかなか面白いと感じました。
ヒットもしてないのに続編が作られることも、その人気の証明ですが、
続編である本作は、なんと全米初登場トップ10入りを果たしています。
前作が続編を匂わせる幕引きだっただけに、待っていたファンも多かったのでしょう。

しかしその出来は、前作を大きく下回っていると思います。
予算は何倍にも増え、バイオレンス描写は派手になりましたが、
そのことが前作の低予算ならではの味わいを損ねていると思います。
前作でコレクターに殺されたのは数人だったので、1人殺されるのもドキドキしたけど、
本作では数十人殺されるため、1人の命が軽すぎて全くドキドキしません。
登場人物も多すぎて、個々のキャラ設定も薄っぺらすぎると思います。

しかし何より残念なのは、殺人鬼コレクターの劣化です。
前作のコレクターは、「ワナオトコ」なんて邦題を付けられるくらいで、
罠を仕掛けて殺すのが得意で、それが他の殺人鬼とは違う彼のアンデンティティーでした。
ところが本作のコレクターは、邦題にはやっぱり「トラップ」と銘打たれているものの、
直接的な攻撃を仕掛けてくることが多くなりました。
本来、罠を仕掛けるという行為は、直接戦うのを避けたいからだと思うのですが、
ジェイソンさながらの武闘派なコレクターなんてガッカリです。
しかも今回彼が戦うのは一般人ではなく、戦闘訓練を受け武装したプロのチームです。
バケモノでもない普通のサイコキラーに太刀打ちできる相手ではないはずが、
罠を使わないタイマンの肉弾戦でも互角以上の力を見せます。
コレクターの正体は昆虫学者だとラストで判明するのですが、
単なる学者がこんなに強いなんて、どんなインディ・ジョーンズだよ!って感じです。
てか、前作での正体は害虫駆除業者の男じゃなかったっけ?

とはいえ本作のコレクターも、罠は一応使用します。
しかし前作では、足元のワイヤーに触れた者の頭上から包丁を落とすとか、
ベタなカニバサミとか、原始的なブービートラップが多く、
まるで一般家屋をジャングルの戦場にでもしているような演出が面白かったのですが、
本作は家屋ごと彼の要塞なので、罠も大掛かりなものになってしまっています。
序盤の地下の秘密クラブでは、コンバイン型大型回転刃で数十人を一気に殺傷、
ケージに閉じ込めて下がる天井で、これまた数十人を一気に圧死させます。
本拠地である廃ホテルでは、飛び出す鉄の処女のようなものや、いろんな爆弾も…。
大規模な機械仕掛けが多く、なんだか『ソウ』のインテリ殺人鬼ジグソウみたいです。
しかし、廃ホテルの罠で最もあり得ないと思ったのは、
人間をコカイン漬けにしてゾンビ化させ、侵入者を襲わせるというもので…。
こうなってくるともうSF映画ですよ。

コレクターは民家などを襲った時に、ひとりだけ生捕し持ち帰り、
昆虫の標本よろしくコレクションにするのですが、
生捕されたもののコレクションに加えなかった人たちをゾンビ化させるみたいです。
コレクション化した人も、結局殺して、その死体でアート作品を作ります。
まるでレザーフェイスの趣味そのもので、どんどんオリジナリティが失われます。
それにしてもコレクションにするために生捕にした行方不明者が50人を超えるってことは、
その何倍もの人がコレクションにされず殺されたってことだし、
秘密クラブだけで100人近く殺しちゃってるし、被害者の実数は3桁では済まないかも…。
単独のサイコキラーによる被害者数としては、あまりに現実的じゃないです。

そんなわけで、前作では魅力的だと思った殺人鬼コレクターですが、
本作の節操ない設定で、その魅力が完全に潰されてしまています。
しかし残念なキャラ改変は彼だけには留まらず、前作から続投の主人公アーキンも、
単なるコソ泥だったはずが、妙にヒロイックでマッチョなキャラに改変され…。
プロの傭兵と互角以上に戦ったコレクターが、アーキンにボコボコにされる展開もあるが、
アーキがそんなに強いなんてパワーバランスがおかしすぎるでしょ。
コレクターのアジトである廃ホテルを発見したのもアーキンですが、
まるで『96時間 リベンジ』の主人公の元CIA工作員並の能力です。
そんな超人的な男だったなら、前作からその超人的能力を活かせと思います。
しかし一番初めにガッカリさせられたのは、本作のヒロインであるエレナです。
これはボクの個人的な趣向でしかありませんが、
ベリーショートの女性に魅力を感じないんですよね…。
前作ではヒロインというかアーキンが助け出すのは、幼い女の子だったので、
守るべきものが大人か子どもかでは、緊張感もかなり差があります。
エレナは監禁用トランクからブラ紐を使って自力で脱出したりと、
アーキンの助けなんて必要ないんじゃないかってほどアクティブだし…。

クライマックスの廃ホテルでの戦いで焼き殺したはずが、
なぜか生き延びていたコレクターですが、後日談的なシーンでアーキンに発見され、
逆に監禁用トランクに押し込まれてしまいます。
その後のコレクターの生死は定かではないので、続編の可能性もありますが、
全米トップ10入りしたとはいえ、予算は膨れ上がったのに興収は前作並なため、
赤字になってしまったようなので、続編企画はもう通らないでしょうね。
こんな魅力を失った殺人鬼コレクターに未練はないので、どうでもいいですが。

関連作の感想
ソウ6
ソウ ザ・ファイナル 3D

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