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しわ

TOHOシネマズで映画上映前に流されているジブリ最新作『風立ちぬ』の特別フィルムが、
4分間もあって鬱陶しいという話を1週間ほど前に書きましたが、
それ以降、特別フィルムの上映中は目を閉じてやり過ごすようになりましたが、
そうするとまた気になる点がひとつ増えてしまいました。
それは『風立ちぬ』の主人公の声です。
全然魅力を感じない辛気臭い声で、主人公がこんなんでいいのかと…。
ボクはアニメ映画は好きだけど、声優には全く興味がないので、
ボイスキャストの俳優起用には全く抵抗がない(むしろ歓迎)なのですが、
『風立ちぬ』の主人公の声って、庵野秀明が担当してるんですってね。
庵野秀明は『ヱヴァンゲリヲン』の監督で、俳優ですらなく演技はほぼ素人。
カメオ程度ならまだしも、さすがに主役に抜擢するのは如何なものかと…。
まさに誰得で、いくらなんでも内輪ノリが酷過ぎると思います。
まぁ特別フィルムでは、詩の朗読らしき台詞だけなので、棒読みなのはそのせいかも。
実際に本編を観てみないことには、彼の声の演技の実力はわかりませんね。
でも庵野は、今年公開予定の『ヱヴァンゲリヲン』の完結編も、全く公開日が決まらず、
本当に今年中に公開されるか疑わしい状況なのに、声優なんてしている場合かとも…。
今年のジブリは宮崎駿監督の『風立ちぬ』より、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』の方が、
現時点では期待できる気がします。
過去のジブリ映画では断然宮崎駿作品派だったのですが…。

とうことで、今日は高畑勲監督に影響を受けたというスペインのアニメ映画の感想です。
配給も三鷹の森ジブリ美術館ですが、もしかしたら本家ジブリ映画より面白いかも?

しわ
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2013年6月22日日本公開。
ゴヤ賞で最優秀アニメーション賞と最優秀脚本賞を受賞したスペインのアニメ映画。

養護老人ホームに預けられた元銀行員のエミリオ。お金に細かい同室のミゲルなど、施設に集まった老人は人それぞれ。完全に介護を要する老人は2階の部屋に入れられることもわかった。そんなある日、アルツハイマーのモデストの薬と自分の薬を間違えられたことから、エミリオは自身がアルツハイマーだと確信する。ショックを受けたエミリオのために、ミゲルは何とかしようと考えた結果……。(シネマトゥデイより)



本作はスペインのアカデミー賞的映画賞である第26回ゴヤ賞で、
最優秀アニメーション賞の受賞したスペイン産アニメ映画です。
スペインは欧州のアニメ大国ではあるものの、まだまだ発展途上なので、
ゴヤ賞のアニメーション部門の受賞にどれほどの価値があるかは疑問ですが、
同時に『私が、生きる肌』など実写映画を押しのけて最優秀脚本賞まで受賞しています。
スペインの実写映画はかなりレベルが高いので、これは快挙でしょうね。
もう少し馴染みのある賞で言えば、アメリカのアニメ専門の映画賞である
第39回アニー賞の作品賞にもノミネートされたみたいです。
『ラルゴ』に敗れはしたものの、日本のアニメ映画は1本もノミネートされていなし、
本作が如何に世界的にも注目された作品だったかがわかりますね。

老いや認知症をテーマに描いたスペインの漫画『皺』が原作の本作。
養護老人施設が舞台で、アルツハイマーの老人が主人公という、
アニメとしては異例な題材や内容の作品だと思います。
こんなアニメは、いかにアニメ大国で内容がかなり多岐にわたっている日本でも、
まず製作されることはない作品でしょう。
日本ではアニメは子どもか若者の見るものってイメージがあるし、
正直「そんなアニメ、一体誰が観たいんだ?」と思いますもんね。
ボクだって信頼と実績のジブリ系列で配給されていなければ、まず観に行かなかったです。
まぁ前回ジブリ美術館が配給した海外アニメ『夜のとばりの物語』は、
あまり信頼に足る作品ではなかったので、多少不安もありましたが、
(その続編もDVDで鑑賞しましたが、輪を掛けて残念な出来でした。)
その前の配給作品『イリュージョニスト』はとても素晴らしい作品で、
本作はその作品のアニメーターのひとりが監督を務めているということもあり、
きっと素晴らしい作品に違いないとも思って観に行きました。

いざ観てみると、なかなか興味深い作品だったと思いました。
しかし楽しめるかといえば、ボクには少しシンドイ内容だったかな…。
いくらかユーモアも交えているけど、痴呆症がテーマなのでやはり重く、
少々鬱気味のボクは、観ている最中に死にたくなりました。
今すぐ死にたいってことはないけど、老後に対する恐怖が高まり、
なるべく早死にしたいと思う気持ちが強まりました。
救いのない物語ですが、誰にでも現実的に起こりうる内容だと思います。
現実的な物語は、アニメよりも実写の方が向いているというのがボクの持論ですが、
本作に限って言えば、アニメを用いて登場人物がプリミティブに描かれているため、
内容のシリアスさが幾分緩和されている気がしたのは有難かったです。
もし実写だったら、シンド過ぎて観ていられなかったかも…。
ちょうど老老介護を描いた夢も希望もない実写映画『愛、アムール』を観た時のように…。

いや、もし実写だったとしても『愛、アムール』よりはマシかな。
痴呆症を題材の一部に含む映画は、だいたい主人公の身内が痴呆症を患いますよね。
『愛、アムール』はもちろん、最近では『奇跡のリンゴ』とかもそうでした。
でも本作は、主人公が痴呆症を患う、ちょっと珍しいタイプの映画です。
観客はだいたい主人公に感情移入するものですが、身内が痴呆症を患うよりも、
自分が痴呆症を患うことの方が、気持ち的に楽な気がしませんか?
もちろん家族に迷惑を掛ける心苦しさはありますが、
本作の場合は痴呆症の主人公は施設に入っていて、直接家族に面倒を掛けることもないし、
ほぼ自分自身だけの問題として痴呆症を描いているので、まだ気が楽です。
ボクの亡くなった祖父母も痴呆症でしたが、ボクもそんな祖父母を見るのは辛くて、
こんなことなら自分が病気だった方が、どれだけ楽かと思ったので…。

長年務めた銀行を定年退職したエミリオは、息子夫婦と暮らしていますが、
痴呆症を患ってしまい、養護老人施設に入居することになります。
でも本人はまだシッカリしているつもりなので、その施設の老人たちの生活に愕然。
これといった娯楽もすべきこともなく、外出や電話も禁止です。
施設には立派なトレーニング器具やプールがあるのですが、
これは施設が役人や入居者の家族に、素晴らしい施設であるとアピールするためのもので、
入居者が使うことはなく、入居者はただ漫然と食べて寝るだけの生活です。
彼らにとってそこが終の住処ですが、死ぬまでぬるま湯地獄なんて正気を失いそうですね。
日本の一般的な養護老人施設がどんな感じかははっきりとわかりませんが、
劇中のような施設だったら確実に痴呆症は進行するでしょうね。
まぁ映画『任侠ヘルパー』の老人ホームよりはまだ文化的ですが…。

そこに入居している老人たちも、症状や状況は様々ですが、現実味のある設定ばかり。
そんな老人たちの中でも、強烈なインパクトなのがエミリオの同室の男ミゲルです。
アルゼンチン育ちの彼は陽気な性格で、社交的でとても面倒見もいい性格ですが、
入居者を騙して金をせしめる守銭奴で、裏ルートで何でも調達するダーティな面も。
「ここでは綺麗事なんて通用しない」と言い張るアナーキーな人物です。
彼は矍鑠としており、まだ養護老人施設に入居するような状況じゃないと思うのですが、
彼は生涯独身で家族がいないため、ここで世話になっているようです。
家族がいないから家族に迷惑もかけないし、家族が面会に来ないのを気に病まない。
だから他の入居者よりも気楽で、どこか達観した印象を受けるのでしょう。
家族のいない老後なんて寂しいと思ってたし、三十路にもなって結婚のアテもないボクは、
ちょっと焦りを感じてもいましたが、孤独感と無縁なミゲルのことを見ていると、
あながち結婚しない方が老後は楽なのかもと思いました。

乳っ巨したばかりのエミリオはミゲルに負けないくらい矍鑠としていると思ったけど、
着実に痴呆症は進行していたようで、徐々に服装や髪形に無頓着になり、
スプーンとフォークの違いや、「ボール」という単語の意味が理解できなくなり、
ついには孫のことまで忘れてしまいますが、それでも彼は自分を痴呆症とは認めません。
周りの哀れなボケ老人とは違うという思いもあるでしょうが、なにより怖いのは、
「殺す気か!」などと老人の叫び声が聞こえる施設2階の要介護老人専用フロアです。
痴呆症が手に負えなくなると、2階に連れて行かれるのではと恐れています。
2階送りになった痴呆症のモデストと同じ薬が処方されていると知ったエミリオは、
なんとか2階に行くまいと医者や看護師に症状の悪化を悟られないように努力します。
でもオウム返ししかできないラモンや、徘徊老人のソルさんなんて、
とっくにそこに送られてもいい症状ですが、まだ1階で生活しているので、
単に痴呆症の程度だけでは2階送りにならないような気もしますけどね。

ある日、エミリオは「家に帰る!」と荷造りを始めます。
てっきり2階が恐ろしくて逃げ出す気かと思いましたがそうではなく、
同室の守銭奴ミゲルから財布や腕時計を盗まれたと疑い、「盗人と同室は御免だ」と。
財布なんて入居間もなく紛失し、その時もミゲルのことを疑っていたのに、
その後も普通に彼と接しているのに違和感を覚えたものですが、
やっぱり痴呆症だから、そんな疑いもすぐ忘れるのでしょうか。
(結局、財布も腕時計も自分で隠しておいて、その隠し場所を忘れただけでした。)
ミゲルに愛想を尽かして出ていくはずが、なぜか彼と一緒に施設を脱走することに…。
自分がなぜ家に帰りたいと思ったのかも、すぐ忘れてしまったのでしょうか。

それにしてもスゴイのはミゲル、脱走用にオープンカーまで調達してしまいます。
入居者のマルティンのためにテリア犬を調達していたのもスゴイと思ったけど、
いくらなんでも車まで調達してしまうなんてね。
しかも他の入居者からせしめた金で、現金一括払いで購入します。
でも自分は運転免許を取ったことがないので、エミリオに運転を任せるのですが、
こんな免許も返納させられた痴呆症の老人に運転を任せるなんて正気の沙汰ではなく、
やはり見た目は矍鑠としているミゲルですが、頭のネジが数本足りなくなってるのかも?
案の定、フラフラと反対車線を走行した挙句、あり得ない脇見運転でクラッシュし…。
ボクはこの交通事故でこの物語は幕が下りるのかと思いました。
というか、交通事故で彼らが死んで終われば、苦しい施設での生活が続くよりも、
彼らにとってもハッピーエンドだと思えたので、一番ベストな幕引きではないかと…。

ところが彼らは生存し、施設に連れ戻されるのです。
ミゲルは奇跡的に軽傷で済むも、エミリオは一時意識不明となり、
意識回復するも痴呆症が急激に悪化したため、恐れていた2階送りになります。
まぁ末期の痴呆症になったエミリオ自身はもう恐怖なんて感じることもできませんが、
ミゲルは絶望し、貯め込んでいた処方薬を一気に服用して自殺を図るが…、という話。
やはり事故で死んでいた方がよかったのでは、なんて思いましたが、
ラストのエミリオの笑顔で、それほど悲観する最後でもなかった気も…。
一昔前に「老人力」なんて言葉が流行りましたが、
痴呆症は死への恐怖を緩和させる人間本来の機能という見方もあり、
あまりネガティブに捉えるものでもないのかもしれません。
とはいえ現状では、痴呆症自体が死と同等以上に恐ろしいので、
そんな達観した見方はできず、やっぱり元気なうちに早死にしたいです。

本作は夢も希望もない老人映画でしたが、
今週末公開の『アンコール!』は老後に希望を見出せそうな老人映画です。
本作は興味深い映画ですが、本作だけだとシンドイかもしれないので、
『アンコール!』と併せて観るとバランスがいいかもしれませんね。
『愛、アムール』『カルテット!』『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』など、
老人映画がやたら多い昨今ですが、やはりそれらは観客も年配の人が多いです。
しかし本作は、特に盛況だったわけでもないけど、観客の年齢層は幅広く、
ボクより若い人もかなり観に来ていました。
たぶん実写だとこうはいかず、これがアニメの訴求力ってことでしょう。

関連作の感想
イリュージョニスト
愛、アムール

コメント

初めまして

随分過去の記事(http://sea.ap.teacup.com/bellerophon/1074.html)についてコメントさせて頂きます。
当時、私も合唱団の子が歌唱しているのだと思っていたのですが、
歌唱しているのも福くんという事が分かりました。
というのもhttp://www.youtube.com/watch?v=zQaKtSSdqIw
見て頂けば分かると思います。

  • 2013/06/26(水) 16:52:45 |
  • URL |
  • アイス #-
  • [ 編集 ]

Re: 初めまして

はじめまして。

申し訳ありませんが、ここは『しわ』の感想のコメント欄なので、
『ハッピーフィート2』の感想記事のコメント欄で返信させてください。

http://blrpn.blog.fc2.com/blog-entry-588.html#comment

  • 2013/06/26(水) 22:26:18 |
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  • BLRPN #-
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