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インポッシブル

現在、TOHOシネマズで映画を観ると、宮崎駿の『風立ちぬ』の特別フィルムが流されます。
『エンド・オブ・ホワイトハウス』を鑑賞した時に初めて観たのですが、
その時は本編上映後に流されたのに、他の映画だと本編上映前に流されました。
ボクとしては上映後に流してほしいと思うのですが、その理由は長いからです。
特別フィルムなんていっても単なる予告編だし、それが4分もあるんですよ。
はじめて観た時は興味深く観れるけど、予告編なんて2度も3度も観たくないので、
本編上映後ならエンドロール終了後すぐに席を立てば観なくて済みます。
なによりその特別映像が…、というか『風立ちぬ』自体が、
いまいち面白くなさそうな作品だから尚更性質が悪いです。

実在の人物の伝記であり、関東大震災のシーンもある『風立ちぬ』ですが、
その製作過程に東日本大震災の影響があるのは間違いないです。
(企画的には『風立ちぬ』の方が早かったみたいだけど。)
この特別フィルムでも震災が強調される構成となっていますよね。
『コクリコ坂から』の公開前後に、東日本大震災や福島の原発事故を受けて、
宮崎駿は「ここ2~3年はファンタジーやる時ではない」と言ってましたが、
ボクは彼の作品にはファンタジーしか求めてません。
他の人がどうかは知らないけど、『風立ちぬ』はヒットしないと思います。
面白くない特別フィルム観る前に前売券買っちゃってるので、一応観に行きますけど、
特別フィルムを強制的に観せられるたびに、期待感が薄まります。

ということで、今日は史上最大の大震災を題材にした映画の感想です。

インポッシブル
The Impossible

2013年6月14日日本公開。
スマトラ島沖地震での実話を映画化したドラマ。

2004年末、マリア(ナオミ・ワッツ)とヘンリー(ユアン・マクレガー)は、3人の息子と共にタイにやって来る。トロピカルムードあふれる南国で休暇を過ごすはずだったが、クリスマスの次の日、彼らは未曾有の天災に巻き込まれる。一瞬にして津波にのみ込まれ、散り散りになった家族はそれぞれの無事を祈りつつ再会への第一歩を踏み出す。(シネマトゥデイより)



2004年のスマトラ島沖地震での実話を描いた本作。
地震による津波は22万人もの死者を出し、過去最大の大災害となりました。
タイのリゾートでその津波に遭遇してしまったアメリカ人一家の物語です。
本作の表現として、あまり相応しくないかもしれないけど、
とても興味深くて、手に汗握る素晴らしい映画だったと思います。
観ている間、心がザワつき感情が昂ぶってくるのがわかりました。
ボクはクライマックスで少し涙が溢れたくらいでしたが、
周りのお客さんの中にはずっと号泣している人もいたほどで、
それが内容の衝撃さを物語っていると思います。
ボクだって泣けなかったわけではなく、この映像を見逃してなるものかという思いから、
視界の邪魔になる涙を抑え込んでいたいただけで、本当に釘づけになる映像でした。
とにかく津波の映像がすごいです。
ディザスタームービーみたいに大袈裟には描かれていませんが、
本当の津波の恐怖がちゃんと描かれていると思いました。
いや、実際に津波を体験したら、この程度の恐怖ではないでしょうけど…。

一昨年に東日本大震災で津波を経験した日本人としても、
スマトラ沖地震を扱った本作は他人事としては見れないと思う反面、
実際は他人事なので、まだ観やすいのかもしれません。
もし東日本大震災の津波を題材に本作のような作品が撮られても、
たぶん辛すぎて観れないし、あと十数年は公開できないんじゃないかな?
『遺体 明日への十日間』も津波被害が題材だけど、津波そのものは描かれなかったし…。
本作も全米では昨年末公開でしたが、スマトラ沖地震から8年も経っているのに、
劇中の津波の描写の生々しすぎると、一時は公開が危ぶまれた経緯もあります。
正直、日本での公開は難しいんじゃないかとも思いました。
東日本大震災当時に公開されていたハリウッド映画『ヒア アフター』は、
スマトラ沖地震の津波をモチーフにした場面が少しあっただけで、
即日公開中止になりましたが、津波は日本にとってそれだけデリケートな題材。
実際、大手配給会社は本作から手を引き、独立系のプレシディオが買い付けました。
それだって、本作がオスカー主演女優賞候補だったお陰でしょう。
その後押しがなければ、本作は未公開のまま、良くてビデオスルーだったでしょう。

ボクたち日本人の観客としても、まだスマトラ沖地震の話だから、
客観的で冷静に観れているのかもしれません。
それに東日本大震災の場合は、天災である地震や津波よりも、
人災である原発事故の方がクローズアップされがちなので、
津波自体の恐怖は忘れがちになるような気がします。
しかし本作は、客観的に津波が観れるので、津波の本当の怖さが伝わります。
特に本作を観て再認識させられた津波の恐ろしい面は、津波自体の衝撃や溺死ではなく、
漂流物や障害物の中を流されることですね。
きりもみ状態で流され、水中で付き出た枝や漂流物に刺さり、
肉が切り裂けるシーンなど、本当に生々しくてギクリとしました。
人や建物が押し流される巨大津波の映像は、パニック映画などでもよくあるけど、
ここまで緻密に水中での恐怖を描いた作品は過去なかったかもしれません。
そんな津波襲来シーンは、実際に水を使って徹底的にリアリティを追求し、
1年近くかけて撮られたんだそうです。

マリアとヘンリーの夫婦と3人の息子の5人家族であるベネット一家は、
日本からクリスマスバカンスでタイのリゾート、カオラックを訪れます。
ホテルのプールで遊んでいると、突然津波が襲来し、5人は流されてしまいます。
マリアはヤシの木に掴まりますが、12歳の長男ルーカスが流されているのを発見し、
助けようと追いかけ、2人は何とか流木に掴まって助かります。
しかしマリアは太股に骨が見えそうなほどの大怪我を負ってしまい…。
大きな木に登って助けを待っていると、現地の村人が救助にやってきて、
病院まで運んでもらいますが、病院には被災者が溢れかえり大混雑です。
なかなか満足のいく治療は受けられず、大怪我を負ったマリアはどんどん衰弱し…。
リゾート地だったからか、病院の被災者はほとんど外国人でしたね。
スマトラ沖地震では外国人被災者が多かったのも特徴ですが、
被災者が白人ばかりな本作の状況はちょっと嘘っぽいです。

ルーカスが暫らくの間、病室を離れて戻ってみると、そこに母の姿はなく…。
彼は病院スタッフに迷子や孤児の集められたテントに連れて行かれます。
母は死んで片付けられたのだと覚悟したルーカスですが、
実は病院の手違いで手術中に別人と入れ替わり、別の場所に移されただけでした。
あり得ないミスですが、これも実話なのかな?
でもこんな混沌とした状況では、あり得ないとも言い切れないです。
母マリアを演じているのがオスカー候補女優ナオミ・ワッツなので、
きっとどこかで生きているだろうとは思ってましたけど…。
再会した母子ですが、マリアの太股の手術は後回しにされ、彼女はますます衰弱します。
あんな足の大怪我は治るとは思えないし、さっさと切断した方がいいと思うのですが、
彼女は足の状態をやたら気にしてるし、彼女が切断を拒んだのでしょうか?
結局最後まで切断してないので、今は完治してるのかな?

津波前のルーカスは思春期にありがちな、ちょっと生意気なガキだと思ったけど、
本当は母親想いで、とても優しい本当にいい子です。
彼が病室を開けたのも人助けをするためで、津波ではぐれた息子を捜している
ベンストロムさんを手伝い、見事に再会させますが、このシーンが何とも感動的で…。
それまでけっこう辛いシーンの連続だったので、少しホッとしました。
まぁそれも束の間、その直後に母マリアが姿を消す悲しい展開が待っていたのですが…。
マリアも信じられないくらい慈悲深い人で、歩けないくらいの大怪我を負いながらも、
瓦礫に埋もれた2~3歳の男の子ダニエルを救い出します。
病院に運ばれる途中ではぐれてしまったダニエル、その安否が気になってましたが、
後に彼も父親と再会できたようでホッとしました。
ベンストロムさんやダニエルは父子再会できましたが、
やはり最も気になるのは、肝心のルーカスが父と再会できるかですよね。

物語の中盤、母マリアと長男ルーカスの物語から、父ヘンリーの物語に移ります。
ヘンリーを演じるのもユアン・マクレガーなので、彼のことは心配してなかったけど、
7歳の次男トマスと5歳の末っ子サイモンのことは気懸りでした。
でも2人とも自力で木に登って難を逃れており、ヘンリーともすでに再会していました。
本当によかったですが、2人ともまだ幼いのにすごいですね。
もちろん長男ルーカスもすごいですが、この家族の生存率は奇跡ですよ。
ヘンリーは2人の息子を安全な山へ行くトラックに乗せて、
自分は被災地で妻マリアと息子ルーカスの捜索を続けます。
その気持ちはわからないでもないけど、2人の息子のことを考えれば無責任です。
もしまた津波が来て自分が死んじゃったら、息子は孤児になるかもしれないのに…。
結局津波は来ませんでしたが、瓦礫で怪我して頭から流血して救助されてるし…。

避難ポイントに運ばれたヘンリーは、そこで他の被災者からケータイを借ります。
充電もままならない状況で、ケータイを貸すなんてなかなか出来ることじゃないです。
そのケータイで、実家に連絡しながら、思わず泣いてしまった彼の姿は胸を打ちます。
彼は妻と息子を捜して、避難所や病院を回ることにしますが、死体安置所にも寄ります。
生存を信じながらも死体安置所に行く心境は、ちょっと測り知れませんね…。
普通の死体袋に混ざって、小さな死体袋が並べられている映像が生々しいです。
観客としては、マリアとルーカスが生存していることがわかっているので、
いつかは会えるだろうと楽観していますが、マリアの容体のこともあるし、
もしかしたら夫婦の再会は手遅れになるのではという不安も…。
そんな中で、病院でルーカスとヘンリーがニアミスするシーンはヤキモキしました。
ちょうどその頃、山から弟たちも降りてきており、まず兄弟が再会するのですが、
ずっと涙を堪えていたボクも、この時ばかりは涙腺崩壊…。
幼い兄弟の再会シーンで感動しない人は人間じゃないです。
その後家族5人が再会し、チューリッヒ保険の世話でシンガポールの病院に移送されます。
うーん、たぶんタイの病院だったら、いずれマリアは衰弱死してただろうし、
命の沙汰も金次第、やっぱり保険って大切なんですね。

振り返ってみれば、震災でバラバラになった家族が再会するだけの物語で、
ある意味、感動のドラマとしてベタな展開の作品だと思います。
それがこんなに素晴らしい映画になったのは、リアルな映像の説得力でしょう。
日本人こそもっと観るべき映画だと思うけど、まだ津波ネタに抵抗があるのか、
独立系配給会社の宣伝力不足のためか、客入りがかなり少なく残念です。
(誰でも1000円均一のTOHOシネマズ・デイだったのに…。)
本当に名作なので、騙されたと思って観に行ってください。

関連作の感想
ヒア アフター
遺体 明日への十日間

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