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プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命

第66回カンヌ国際映画祭の授賞式が行われ、
是枝裕和監督の『そして父になる』が審査員賞を受賞しました。
その前にエキュメニカル賞(全キリスト教会賞)の特別表彰を受けたりしたこともあり、
最高賞パルムドールや審査員特別グランプリの期待も高かっただけに、
ちょっと残念だった気も若干しますが、明るいニュースだと思います。
それにここ数年、『愛、アムール』などパルムドールは駄作ばかりだし、
『そして父になる』がパルムドールを獲れなかったのは駄作ではない証明かも。
まぁ今回のパルムドールであるゲイ映画『Blue Is The Warmest Colour』は、
なかなか刺激的な内容でちょっと面白そうではありますが…。
審査員特別グランプリを受賞した『Inside Llewyn Davis』も
コーエン兄弟の作品なので期待が持てますが…。

ということで、今日は2年前のカンヌ映画祭でも注目された『ドライヴ』の主演俳優、
ライアン・ゴズリングの主演作の感想です。

プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命
The Place Beyond the Pines

2013年5月25日日本公開。
『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス監督によるクライムドラマ。

天才ライダーのルーク(ライアン・ゴズリング)は移動遊園地でバイクショーを行う刹那的な日々を送っていたある日、元恋人ロミーナ(エヴァ・メンデス)と再会。彼女がルークとの子どもを内緒で生んでいたことを知ると、二人の生活のためにバイクテクニックを生かして銀行強盗をするようになる。ある日銀行を襲撃したルークは逃走する際、昇進を目指す野心的な新米警官エイヴリー(ブラッドリー・クーパー)に追い込まれるが……。(シネマトゥデイより)



インディペンデント映画である本作は、全米でたった4館で公開がスタートしますが、
口コミで話題になったのか、徐々に公開館数が増え、最高1500館以上、
ボックスオフィスも最高6位にまでなった作品です。
それもそのはず、今年上半期でも屈指の面白い映画だと思います。
物語はひりつくような緊張感のあるクライムサスペンスで目が離せません。
キャストもライアン・ゴズリング、ブラッドリー・クーパーと、
今クライム映画撮るなら、この2人だろうと思うような素晴らしいキャスティングで、
渋くてかっこいい、男の映画に仕上がっています。

ライアン・ゴズリング演じるルークはサーカスのバイク乗りで、
その巡業で2年ほど前に訪れた町アルタモントに戻ってきます。
するとそこで別れた恋人ロミーナに遭遇し、彼女が自分の子供を出産していたと知り、
自分の子ジェイソンを目の当たりにした彼は、サーカスを止め町に滞在することを決意。
しかしロミーナには黒人の新しい恋人がおり、母子はその男の家に転がり込んでいて…。
ロミーナとヨリを戻して2人を養うために、ルークは金が必要になります。
そんな折、彼のバイクの腕を見込んだ自動車修理工場の男ロビンから、
銀行強盗の誘いがあり、彼はそれを受けてしまいます。
経験者であるロビンの指示通り銀行強盗をしてみると、意外とあっけなく成功。
気を良くしてもう一度銀行強盗をするも、これまた成功します。
お金も貯まってきて、ロミーナや子供ともいい感じになってきた頃、
ルークは後釜の男とケンカになり、暴行罪で逮捕されてしまいます。
ロビンに保釈金を払ってもらい解放されるも、ロミーナとの関係は壊れてしまい、
ヨリを戻すためにはもっとお金がいるのに、ロビンは銀行強盗をやめると言い出し…。
そこでルークは、1人で銀行強盗を行うことにするが…。

ロビンの銀行強盗計画は杜撰なものですが、それだけに綱渡りでドキドキしました。
物語の流れ的にはいつか失敗するはずだけど、それがいつなのかはわからないので、
初回からかなり緊張感がありました。
それにしてもルークの銀行強盗を失敗させる警察官役である
ブラッドリー・クーパーがなかなか登場しません。
ダブル主演のはずなのに、本編開始からかなり経つのに姿を見せず…。
と思っていたら、ルークが1人で銀行強盗をした時、開始から約50分、
ようやくクーパー演じる新人巡査エイヴリーが登場します。
彼はバイクで逃走するルークをパトカーで追跡するのですが、
パトカーの車載カメラを使ったカーチェイスはなかなかの臨場感です。
追い詰められ、ある民家に立てこもったルーク。
エイヴリーはひとりでその民家に突入し、なんとルークを射殺してしまうのです。

約50分間、主人公だったルークが物語半ばにして死んじゃうなんて、
『サイコ』的な衝撃を覚えました。
と同時に、前半全く出番のないクーパー演じるエイヴリー巡査に、
主人公がバトンタッチされる構成なのだと理解しました。
ルーク編、エイヴリー編と分かれているわけですね。
前半の主人公を殺した、言わば敵役が次の主人公になるという構成は興味深いけど、
ゴズリングとクーパーの粋な共演を楽しみにしていただけに、
実質ほとんど共演シーンが無いに等しい構成は、少し残念な気も…。
しかしここから始まるエイヴリー編は、ルーク編を凌ぐ面白い内容になります。

負傷しながらも連続強盗犯を射殺したエイヴリーは
住民や警察署から英雄と持て囃されますが、実は彼の発砲は違法なもので…。
まだ1年未満の新米巡査である彼は、初めての事件にテンパっており、
突入する方法も規則に則っておらず、発砲したのも彼が先です。
幸い目撃者がいなかったため、彼はその真相を報告しませんでしたが、
正義感の強い彼は、自分が英雄扱いされることに居心地の悪さを覚えます。
また自分が違法に射殺したルークに、自分の子供と同じ歳の子供がいたと知り、
彼はとてつもない罪悪感を抱え、後悔し苦悩するのです。

ある日の夜、何も聞かされずに同僚の警官たちに連れ出されたエイヴリー。
彼らが向かったのはルークが死んで悲しんでいるロミーナの家です。
同僚たちは令状も取らずに強引に彼女の家を家宅捜索して、
ルークが息子ジェイソンのために遺した金14000ドルをこっそり押収し、
自分たちの懐に仕舞ってしまうのです。
正義感の強いエイヴリーは、同僚の腐敗ぶりに驚きますが、
押収した半額7000ドルを無理やり渡され共犯にされ、何も言えなくなります。
英雄だったはずの彼ですが、なぜか署長から証拠保管室への異動を命じられます。
そこにまた腐敗同僚がやってきて、証拠品のコカインを横流ししろと要求。
さすがにこれは放っておけないと思ったエイヴリーは、
家宅捜索の件も含め署長に内部告発しますが、警察の腐敗の根は深く、
逆に「おまえは仲間を売るのか?」と怒られ、告発も握りつぶされます。
内部告発が同僚にバレ、身の危険を感じたエイヴリーは、
1人で警察の汚職の証拠を掴み、地方検事補になり、汚職警官を一掃するのです。

不法な発砲によって英雄になってしまったエイヴリーが、
更なる汚職に飲み込まれ、苦悩しながらも警察の腐敗と戦うという、
なんとも皮肉な物語でとても面白いです。
ここまでで本編開始から約90分。
かなり内容が濃かったし、なかなか痛快なオチで満足したので、
これでもう終わりかと思ったのですが、物語は更に続きます。

物語はそれから15年後に移り、ルークの息子ジェイソンと、
エイヴリーの息子AJが主人公となる編に突入するのです。
高校で仲良くなったジェイソンとAJでしたが、ジェイソンが父親ルークの顛末を知り、
父親の復讐を企てるという内容ですが、正直ちょっと蛇足だったかも…。
ルークとエイヴリーの事件の決着、つまりルーク編の決着という意味では、
必要な物語だと思うのですが、ジェイソンが本当の父親のことを知り、
エイヴリーに辿りつくまでの展開が長すぎるし、何よりキャストが微妙です。
ルーク編、エイブリー編の主演の素晴らしい小粋なキャスティングとは違い、
高校生のジェイソンとAJは全く知らない駆け出しの俳優で、正直かなり地味です。
一応、クーパー演じるエイヴリーは前の編から続投していますが、
出番はそれほど多くなく、やはり少年二人の因縁が中心となります。
クライマックスのジェイソンとエイヴリーが対峙するところなんかは、
それなりに盛り上がるものの、ルーク編やエイブリー編のクライマックスに比べると、
尻つぼみ感は否めず、やっぱりちょっと蛇足な気がするんですよね。
上映時間も結局140分とかなり長くなってしまい、観ている方も集中力が切れ、
終盤はどうしてもダレてきちゃうし…。

エイヴリーの息子AJは、もし父親の事件が関係なくても、
ジェイソンに復讐されても仕方がないクソ野郎だったため、
本作で描きたかったであろう血の因果を巡る物語という意味合いも少し弱いです。
性格的にもAJが正義感の強いエイヴリーの息子というのは違和感があり、
むしろ逆にジェイソンがエイブリーの息子っぽい気がしました。
まぁ州司法長官に立候補するほどの権力者になったエイブリーは、
AJのドラッグ所持をもみ消したりと、もはや正義感が強いとは言えないけどね。
エイヴリー編での警察の腐敗撲滅は、ルークに対する贖罪でもあったと思うので、
そこで終わってもよかった気がしますが、ジェイソン編のオチだと、
結局ジェイソンの復讐は成されたとは言えず、クソ野郎AJも無事だったし、
なんだかちょっと釈然としない終わり方でした。

まぁそれでも今年上半期屈指の面白さなのは間違いないです。
ジェイソン編の出来次第では、屈指どころか上半期最高傑作にもなり得たので、
そう考えるとちょっと惜しい気もしますが…。

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