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モネ・ゲーム

関西人のボクは、橋下徹大阪市長のことはある程度支持していたのですが、
今世間を騒がせている彼の「従軍慰安婦」についての発言にはガッカリしました。
ボクは「従軍慰安婦」について、ちゃんとした見解を持っているわけではないけど、
とにかく欧米諸国に矛先を向けるのはやめてほしいです。
この問題は主に周辺諸国との問題なのに、アメリカを不快にさせても得はないです。
ボクは反中韓なので、中国や韓国にどう思われようが知ったことではないですが、
親米が強いので、不用意にアメリカを敵に回すようなことはマジでやめてほしいです。
もちろん基地問題とかTPPとか、全てアメリカに阿(おもね)るべきとは思いませんが、
今回の発言はあまりに飛躍しすぎており、提案のベクトルもおかしいです。
ボク自身は性風俗なんて全てなくなっても全然かまわないと思っているし、
諸外国は橋下市長の発言が日本人の総意であるとは思わないでほしいです。
たかが極東の市長風情の妄言だと思って聞き流してください。
まぁ日本で報じられているほど、アメリカ人は関心がないでしょうが…。

ということで、今日は日本人の対外的イメージに影響がありそうな映画の感想です。

モネ・ゲーム
Gambit.jpg

2013年5月17日日本公開。
コリン・ファースとキャメロン・ディアスが初共演のコメディ。

美術学芸員のハリー(コリン・ファース)はモネの名画のニセモノを使った詐欺を思いつく。相棒PJ(キャメロン・ディアス)が絵画の所有者に成り済まし、ハリーは本物と見まがうような贋作を用意して標的の億万長者シャバンダー(アラン・リックマン)に近づく。しかし超天然のPJが次々と騒動を巻き起こし、シャバンダーが別の絵画鑑定士を呼んだことで、成功間違いなしのはずの計画は予期せぬ方向に……。(シネマトゥデイより)



いやー、面白かった。
さすがコーエン兄弟が脚本を務めただけのことはあり、
なかなかウィットに富んだクライムコメディで、
笑いのツボを押さえたお洒落で良質なコメディだと思います。
なんでも、『泥棒貴族』という映画のリメイクなんだそうですが、
そのオリジナル版は1966年に公開された作品のようです。
つまり半世紀ちかくも前の作品のリメイクなので、
オリジナルを知ってる人なんてほとんどいないでしょうね。
もちろんボクも知りませんが、コーエン兄弟に脚本を書いてもらえば、
オリジナルをそのまま踏襲するなんてことになるはずもなく、
もはやリメイクとは呼べないくらいにストーリーも一新されたそうです。
結果的に古臭さを感じさせない楽しい脚本になったとは思うのですが、
コーエン兄弟に依頼する前の脚本は、日本が舞台だったそうで、
日本人としては旧脚本がどんな内容だったのかもちょっと気になりますね。
その名残なのか、本作は日本人の登場人物が深く関わっている物語になっていますが、
正直なところ、本作の日本人の扱いはあまりいいとは言えず、
場合によってはちょっと不快感を覚えるかも…。
そのことについても後ほど書きますが、基本的にはコーエン兄弟らしい面白い作品です。

物語は、美術品収集家の大富豪シャバンダーに雇われている鑑定士ハリーが、
ジャバンダーに無能扱いされた復讐に、シャバンダーを贋作詐欺に掛けようという話。
印象派の画家クロード・モネの代表作である「積みわら」の贋作を作り、
それをシャバンダーに買わせようという計画です。
シャバンダーは「積みわら 夜明け」という絵画を所蔵しているのですが、
この絵画には対になる行方不明の「積みわら 夕暮れ」という作品があり、
鑑定士ハリーは「積みわら 夕暮れ」の贋作を作って売りつけようとします。
ボクは絵画には全く疎いですが、この「積みわら」はどこかで見たことある気が…。
と思ったら、モネの「積みわら」は連作で、対どころか25種類もあるそうですね。
本作の2枚の「積みわら」はそれをモチーフにして独自に作られたものなので、
どこかで見たはずはありませんでした。

シャバンダーが所蔵する「積みわら 夜明け」は、
彼が80年代に競売で落札しましたが、落札額はなんと1100万ポンドです。
なのでハリーは贋作の「積みわら 夕暮れ」を1200万ポンドで買わそうとします。
予告編などでは1200万ポンドを日本円に換算して15億円としていますが、
昨今の急激な円安で、今だとだいたい18億円以上です。
「モネの絵画ってそんなに高いの?連作なのに?」って思ったので調べたら、
モネの代表的連作である「睡蓮」の1枚が、一昨年に30億円以上で売れたそうで…。
「積みわら 夕暮れ」も本物なら1200万ポンドはお買い得?

(もちろん物語の設定上ですが、)本物の「積みわら 夕暮れ」は、
第二次世界大戦中にナチスの将校の手に渡ります。
しかしパットン将軍の部下、プズナウスキー軍曹が奪還するも、その後行方不明に…。
ハリーは作った贋作をプズナウスキー軍曹の孫娘でカウガールのPJに持たせ、
シャバンダーに贋作を本物と信じ込ませ、彼女から買わせようとします。
ハリーがその贋作を「本物である」と鑑定して、シャバンダーを騙す計画です。
PJには計画に加担する謝礼として50万ポンド渡します。
うーん、完璧な贋作詐欺計画ですね。
…って、コーエン兄弟のクライムコメディが、そんな計画通りに進むはずないです。
楽天家のハリーの計画は完全に机上の空論で、全く計画通りにはなりません。
計画ではハリーが鑑定するはずでしたが、シャバンダーは他の鑑定士を雇い…。
その状況を何とか打開しようと右往左往するハリーの滑稽さを描いた物語です。
…って、コーエン兄弟のクライムコメディが、そんな単純な展開で終わるはずはなく、
最後には予想外の大どんでん返しが用意されています。

以下、ネタバレになります。

シャバンダーに雇われた鑑定士が贋作を鑑定しますが、
この鑑定士がとんだ食わせ者で、贋作を見破ることができません。
ハリーからしてみれば「してやったり!」な状況ですが、
何と彼は自分で自分が作った贋作を鑑定し、偽物だと断定するのです。
なるほど、1200万ポンド騙し取ることよりも、
自分を無能扱いしたシャバンダーを見返すことを優先したのか。
…と思いきや、実は彼の目的は端から贋作詐欺で金を騙し取るのではなく、
シャバンダーの所蔵する本物の「積みわら 夜明け」を盗み出すことだったのです。
「積みわら 夕暮れ」の鑑定の際に、見比べるために用意された「積みわら 夜明け」を、
彼は鑑定前にこっそり贋作にすり替えて盗み出したのです。
楽天家で、何をしても失敗ばかりのオッチョコチョイだと思ってたハリーが、
実はここまで計算していたとは、予想外の展開でした。

しかしこの展開こそ、あまりに都合がよすぎる楽天的な机上の空論ですよね。
これを成功させるためには、シャバンダーがハリー以外の鑑定士を雇う必要があります。
日頃から無能を装って自分の信用を失墜させておけば、
そのジャバンダーの行動はある程度予測できたかもしれません。
しかしジャバンダーが雇った鑑定士が本当に無能じゃないと計画は成功しません。
用意した「積みわら 夕暮れ」は、わざわざ贋作であるとわかるように、
肖像画の上に重ね描きしたもので、真っ当な鑑定士なら簡単に見破れるものだし、
事前に贋作にすり替えた「積みわら 夜明け」も偽物だと気付かれかねません。
たまたまあり得ない無能鑑定士だから上手く行ったものの、
シャバンダーが誰を雇うかまで予測するのは不可能だと思います。

またハリーは盗んだ「積みわら 夜明け」を、日本人の美術品収集家に売ってしまうが、
その売値が1000万ポンドというのも引っ掛かります。
大金には違いないけど、シャバンダーを騙して売れば1200万ポンドだったのに…。
ハリー自身が収集するために盗んだのならわかるけど、結局金が目当てだったなら、
当初の計画通りシャバンダーを騙した方が200万ポンド、約3億円も多く儲かったのに…。

となると、やっぱり最大の目的は金ではなくシャバンダーへの復讐ってことになるけど、
正直ボクには、彼がそれほど嫌な奴だとは思えませんでした。
ハリー曰く「弱者を甚振るヌーディストの下衆野郎」ですが、
例えばPJなんかに対しては意外と紳士的だった気がします。
振りかどうかはわからないけど、ハリーの行動が無能に見えるのは仕方ないし、
彼にイジメられるのもハリーの自業自得なところも…。
あ、彼が軽蔑しているのはハリーだけではなかったですね。
商談相手の日本人のこともかなり見下していました。
これが前述した本作の日本人の扱いに対する不愉快なところなのですが、
シャバンダーが日本人を侮辱することが不愉快なわけではありません。
侮辱されるような振る舞いをしている本作の日本人が不愉快なのです。

バブル当時、日本人が金にモノを言わせて世界中の美術品を買い漁っていたので、
美術品収集家のシャバンダーが日本人を嫌いなのは仕方ないことです。
「積みわら 夜明け」も日本人との競り合いで1100万ポンドまで高騰したし…。
当時はソニーがコロムビア映画を買収したりして批判を受けましたが、
その頃の日本人投資家はまるで今の中国の大富豪のようでボクも嫌いです。
当時の日本人のイメージはもう取り返しがつかないので諦めるしかありませんが、
本作では今の日本人も当時の日本人像を引きずるように描かれているのが残念です。
これが海外から見た日本人のステレオタイプなのか、
はたまたコーエン兄弟の日本人のイメージなのかはわかりませんが、
時代錯誤も甚だしいし、日本の実態を全然捉えていないのは間違いないです。
イギリスのメディア王であるシャバンダーは、
日本の「コンニチハ・メディア」というケーブルテレビ業者と商談しますが、
その業者は4200万人の視聴者を抱えているというあり得ない設定で、
日本のメディア事情を全くリサーチできていないのが窺えます。
また、そこの社員がバカを装って外国企業に媚を売るやつらで、
こんな態度ではもともと日本人が嫌いなシャバンダーでなくても見下しますよ。
最終的には日本人を見下していたシャバンダーが、
ハリーと日本人美術品収集家タカガワに一杯食わされるのですが、
日本人が違法行為でイギリス人から美術品を盗んだわけで、
日本人の中には痛快だと思う人もいるかもしれないけど、
本作を観た外国人は日本人にあまりいい印象を持たないと思います。
まぁ外国映画の中で日本人の扱いが変なのは今に始まったことではないし、
日本人の自業自得な面もあるのでそれは諦めるしかないです。

大どんでん返しで予想外なオチだったのは面白いけど、
いくらコメディとはいえ、もうちょっと整合性はあってもよかったかな。
シャバンダーが「積みわら 夜明け」に仕掛けたセキュリティシステムも、
壁から額を外すと部屋にライオンが解き放たれるという独創的なもので、
たしかに画的には面白いと思ったものの、本当にあんなセキュリティだと、
守るべき絵画が逆にライオンに無茶苦茶にされかねませんよね。
1000万ポンド以上もする絵画をこうもあっさり盗めるハリーが、
サボイホテルの廊下に飾ってあるだけの明の壺を盗み出せないのも不自然ですし。
まぁその展開にはかなり笑わせてもらったので別にいいのですが…。
かなり笑える作品なのに、批評家の評価がかなり低いのもなんだか納得です。
あとキャメロン・ディアスがカウガールの若い娘役というのも、
年齢的にいい加減無理があるような…。

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