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県庁おもてなし課

フジテレビの次期社長が亀山千広になる見通しだそうです。
亀山千広は『踊る大捜査線』を立ち上げた人ですが、
映画ファンのボクとしては、フジテレビの映画部門のお偉いさんって印象の人で、
彼の製作した映画はテレビの宣伝力を使って強引にヒットさせてしまうため、
「世界の亀山モデル」なんて揶揄されることもありますが、
彼には正直あまりいい印象は持っていません。
ボクは安易にテレビドラマが劇場版化され、そんな映画ばかりがヒットする状況に、
強い懸念を感じていますが、そのビジネスモデルを確立したのがこの男です。
日本映画における彼の罪は計り知れないと思っています。
でも彼の作品は駄作率が高いけどヒット作が多いのも事実なので、
ヒットメイカーの彼が社長になれば落ち目のフジテレビも少しは変わるかも。
なにより彼が社長になりテレビ事業に集中することで、
彼が映画製作に関わる機会が減るであろうことは喜ばしいことです。

ということで、今日はフジテレビ系列の関西テレビ製作の映画の感想です。
本作にフジテレビは絡んでおらず、もちろん亀山千広とも無関係ですが…。

県庁おもてなし課
県庁おもてなし課

2013年5月11日公開。
有川浩による同名小説を、関ジャニ∞の錦戸亮主演で映画化。

観光の促進を円滑にするために高知県庁は「おもてなし課」を設立。若手職員・掛水(錦戸亮)を中心としたメンバーたちが何をすべきかわからず困惑していると、地元出身の作家・吉門(高良健吾)から役所気質と民間感覚のズレを痛烈に批判される。発奮した掛水は柔軟な発想力を持つアルバイトの多紀(堀北真希)と共に、本当のおもてなしを見つけ出すべく奔走する。(シネマトゥデイより)



ボクにとって2011年のベスト邦画だった『阪急電車』の原作者である有川浩と、
同じく監督である三宅喜重の再タッグによる作品というだけでも楽しみな本作ですが、
さらに2010年のベスト邦画である『ちょんまげぷりん』の錦戸亮が主演という、
絶対に見逃すことができないマストな作品です。
観る前から「2013年のベスト邦画に違いない」ってくらいの大きな期待をしていました。
でもいざ観てみたら、まぁ悪くはなかったけどベスト邦画にはほど遠い印象で…。
うーん、期待を掛け過ぎたのがいけなかったのか、物足りなさを感じます。

そもそもボクが『阪急電車』を好きなのは、その映画の舞台である阪急電車沿線が、
兵庫県西宮市出身のボクにとっては地元なので、地元贔屓によるところもありました。
その点では本作も地方が舞台のご当地映画ですが、高知県が舞台ですからね。
比較的親近感のある県ではありますが、思い入れがあるほどでもないです。
『ちょんまげぷりん』にしても今思えば錦戸亮の演技を評価していたのではなく、
大好きな中村義洋監督の作品だったのと、物語の素晴らしさに感動しただけでした。
錦戸亮の演技を見たのはそれ以来ですが、なんだか下手になっている気が…。
慣れない土佐弁のせいかもしれませんが、どうにも演技臭いです。
彼の演技が作品の足を引っ張ってるってほど酷いわけでもないけど、
ジャニーズの中では演技派なのかなと思っていたので、ちょっと意外で…。
なので『阪急電車』や『ちょんまげぷりん』との比較では分が悪すぎ、
それらと同等の期待をしてしまえば、裏切られるのは当然だったと思います。

とはいえ、好きな映画と比較せずとも、やっぱり「並」の映画だったと思います。
同じ原作者の映画ならば先月末公開されたばかりの『図書館戦争』の方が楽しめました。
本作は雰囲気は好みですが、ストーリー自体がかなり弱い気がします。
設定や展開に納得できないところも多く、あまり感動できません。

主人公の掛水は高知県庁の観光振興部に新設された「おもてなし課」の若手職員です。
この「おもてなし課」は実際に県庁内にある課らしいですが、
本作で描かれているような業務をするところではないみたいです。
まさに「おもてなし」をするところで、観光客の観光案内とかを主にしているようで、
観光客を呼ぶための広報活動をしているわけではなさそうです。
そういう業務は本作でも「おもてなし課」のオフィスの横にチラチラ映っている
「観光政策課」がしているのだと思われます。
まぁ「観光政策課」よりも「おもてなし課」の方がインパクトがある名称だし、
フィクションなので業務内容を変更しても別にいいとは思います。
しかしアルバイト含め5人しかいない課に県の観光行政を任せるなんて、
ちょっと考えられない設定だと思います。
せいぜい市町村の役場の村興しチームって印象を受けるんですよね。

やることが決まってないのに見切り発車気味に新設された「おもてなし課」は、
とりあえず、広末涼子とか間寛平とか西川きよしとか、
高知県出身の有名人に観光特使になってもらおうと考えます。
西川きよしって「秘密のケンミンSHOW」で大阪府出身として出演してるけど、
本当は高知県出身だったんですね。
彼はきっと高知県出身なことを隠したいのだろうから、特使の話は断るでしょうね。
作中で観光特使のひとりに選ばれたのが、高知県出身で東京在住の小説家の吉門。
人気芸能人ならともかく、露出の少ない小説家なんて特使になってもらっても、
あまり観光に役立つとは思えませんでしたが、この吉門のモデルこそ本作の原作者らしく、
高知県出身の有川浩は実際に高知県庁から観光特使の依頼を受け、
序盤の掛水と吉門のやりとりなんかは、その時のエピソードがネタだそうです。
有川浩に依頼したことで、高知県を舞台した小説が書いてもらえて、
こうして映画化までされたんだから、下手な芸能人の観光特使よりも効果的でしたね。

「おもてなし課」は吉門の紹介で観光コンサルトの清遠に力を借りることになります。
清遠は20年前に「パンダ誘致構想」を提案したことで、県庁を追われた元県庁職員です。
たしかに公務員の発想ではない、とんでもない構想だと思いますが、
パンダのいる神戸市立王子動物園が近くにある兵庫県民のボクの実感としては、
もしパンダ誘致に成功したとしても、それほど観光客は増えないと思います。
なので清遠の手腕にも疑問を感じますが、彼が「おもてなし課」に提案した
「高知レジャーランド構想」もなんだか微妙だったかも…。
高知県全体をアウトドア関係のレジャーランドにしてしまおうというプランですが、
要はホエールウォッチングとかパラグライダーとか、今あるアウトドアレジャーを
ちょっと整備してアピールしようというだけのものです。
「パンダ誘致構想」に比べても、あまりに在り来たりなプランというか、
自然が自慢の自治体ならどこでもやっていることだと思います。
そんなプランでコンサルト料500万円なんて…。
それに「高知県は自然しかない」という発想から生まれたプランですが、
よさこいや坂本龍馬など、文化的な観光資源も多い県だと思います。
うどんしかイメージのないお隣の香川県よりも勝ち組みな気がします。

でも、そんな設定的なものよりも、もっと納得がいかないのは、
「おもてなし課」が結局何も為していないということです。
「高知レジャーランド構想」も成功してないし、観光客の一人も呼べてません。
プランが高知県知事の目に留まるところまでいくのですが、
そこで終わり何ひとつとして実現しないまま幕が下りてしまっているので、
物語として達成感というか、いまいち盛り上がりを感じないんですよね。
というのも、本作は「おもてなし課」が高知県の観光振興をする話ではなく、
ロマンス映画として作られているからなのだろうと思います。
「おもてなし課」はそのロマンスの舞台でしかないわけです。

ところが、そのロマンスがかなりイマイチ。
「おもてなし課」の掛水と、アルバイトの多紀の恋物語で、いわばオフィスラブですが、
掛水が清遠の娘・佐和を「かわいい」と言ったことに多紀が僻んだり、
多紀が吉門のファンなことで掛水が嫉妬したりと、あまりに幼稚な四画関係な展開で…。
なんだか学生気分で仕事しているように思えるんですよね。
職探しで困っていた多紀を掛水が「おもてなし課」に入れて助けてあげるのですが、
これも明らかな公私混同だし、不安定なアルバイトの立場の弱さに、
公務員が浸けこむ様な展開で、なんだか不愉快さすら感じてしまいます。
逆に不安定な現状に不安を感じている多紀も、あわよくば公務員の男に取り入ろうと、
わざわざ県庁でアルバイトしているような気もして、双方に不純さを感じます。
とにかく、仕事に全力投球しているようには思えず、なんだか楽な仕事な印象です。
公務員になりたい学生の多くが希望職種に役所職員を挙げていると最近聞きましたが、
こんな遊び半分な職場を見せられると、それも納得しちゃいますね。

そもそも多紀を「おもてなし課」に加えることができたのは、
観光特使である吉門の「若い女性の外部スタッフを入れろ」という提案があったからで、
その提案は吉門が「公務員には民間感覚が欠けている」と考えたからです。
たしかにアルバイトである多紀は公務員ではないものの、
短大卒業後に県庁の総務部でアルバイトをしていたので、民間で働いた経験はなく、
民間感覚を持った外部スタッフと言えるかどうかは甚だ疑問です。
佐和から詫び料受け取る時の対応も、オンブズマンがどうだとか事務的で、
規則重視で融通が利かない行政的な印象を受けました。
彼女は「レジャー私設のトイレが汚い」など意見を言ったりもしましたが、
それは民間感覚ではなく、単に女性の立場での意見だしね。
結局「おもてなし課」の民間感覚は、コンサルタントの清遠が全て担った感じです。
まぁ清遠とて元は県庁職員なわけだから、完全な民間人なんてひとりもいないのですが…。

と、掛水と多紀のロマンスは納得いかないものでしたが、
もうひとつの吉門と佐和のロマンスはなかなかよかったと思います。
幼い頃、吉門の母親が沢の父親である清遠と結婚し、2人は義理の兄妹になりますが、
両親が離婚し、赤の他人になってしまうという、なかなか複雑な関係です。
子どもの時から一緒にいた義理の兄妹に恋愛感情が芽生えるかはわかりませんが、
なんだか少し禁断の愛っぽい感じで、ちょっと興奮しますね。
いつも無愛想なのに、料理を褒められただけで喜びを隠せない、
佐和のツンデレ(?)なところが可愛くて魅力的でした。
吉門も無礼でちょっと変人ぽいけど、なかなか面白い男だと思いました。
この部分がよかったので、本作もなんとか及第点になった感じです。

『龍馬伝』を見た時は高知に旅行したくもなったけど、
本作を観ても、まったく高知に行きたいとは思わなかったです。
2010年の高知県PR映画『君が躍る、夏』も全くダメな作品でしたが、
本作の劇中でも言われているように、高知県っていいところはいっぱいあるのに、
発信力がないというか、それを伝えるのが下手なのかもしれませんね。

関連リンク
ちょんまげぷりん
阪急電車 片道15分の奇跡
君が躍る、夏

コメント

最近になって、はじめて読みました。
読んでるときは、すっかり作者のペースで、高知レジャーランド化構想に魅せられてしまいますが、ここのブログを読むと、現実はそう甘くはないなと思います。
とても参考になりました。
社会派に彩られた軽いタッチの恋愛小説、その小道具のひとつとして高知レジャーランド化構想があるということですね。
社会派という面では、清遠が、癒着や公平性や決定過程の不透明性を問題にされてはずされるくだりは、今の加計問題で野党・マスコミと官僚たちが、よってたかって改革潰しに走る構図と2重写しになって、既得権益擁護の強さと改革のむずかしさを改めて感じた次第です。
肩のこらない社会派のオブラートに包まれた、通俗小説の傑作なのでしょうね。

  • 2017/09/29(金) 00:57:48 |
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  • 通りすがり #clEdIY5A
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