ブログデンティティー

blog-dentity since 2013

ハッシュパピー バスタブ島の少女

第85回アカデミー賞の作品賞の候補作品、漸く全て鑑賞できました。
そこでそのオスカー候補全9作品を、面白かった順にランキングしたいと思います。

第85回アカデミー作品賞 個人的ランキング(実際の受賞結果)
1位『世界にひとつのプレイブック』(主演女優賞)
2位『アルゴ』(作品賞ほか3冠)
3位『レ・ミゼラブル』(助演女優賞ほか3冠)
4位『ハッシュパピー バスタブ島の少女』(無冠)
5位『ジャンゴ 繋がれざる者』(助演男優賞ほか2冠)
6位『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(監督賞ほか4冠)
----------越えられない溝----------
7位『ゼロ・ダーク・サーティ』(音響編集賞)
8位『リンカーン』(主演男優賞ほか2冠)
----------越えられない溝----------
9位『愛、アムール』(外国語映画賞)

実際にオスカーを受賞したのは2位の『アルゴ』でしたが、その結果には納得です。
上位3作品は僅差なので、どれが受賞してもおかしくはなかったので。
退屈な作品もあったけど、2/3は楽しめたので上出来な年だったでしょう。

ということで、今日は最後のオスカー作品賞候補の感想です。

ハッシュパピー バスタブ島の少女
Beasts of the Southern Wild

2013年4月20日日本公開。
新人監督のベン・ザイトリンによる低予算のインディペンデント作品ながら、
第85回アカデミー賞で作品賞ほか4部門にノミネートされたドラマ。

6歳の少女ハッシュパピー(クヮヴェンジャネ・ウォレス)は、“バスタブ”と呼ばれるコミュニティーで、父親のウィンク(ドワイト・ヘンリー)と暮らしている。彼らは、閉鎖的な場所であったものの穏やかな日々を送っていたが、ある晩、嵐が全てを奪い去る。突然大好きな場所や仲間を失ったハッシュパピー。途方に暮れる状況の中、ウィンクが重病であることを彼女は察知し……。(シネマトゥデイより)



第85回アカデミー作品賞候補の中で、最もダークホース的な存在だった本作。
他の候補の監督は『シンドラーのリスト』のスピルバーグ、『白いリボン』のハネケ、
『ハート・ロッカー』のビグロー、『パルプ・フィクション』のタランティーノ、
『英国王のスピーチ』のフーパー、『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー、
『ザ・ファイター』のラッセル、そして『ザ・タウン』のアフレックと、
選出が保守的すぎるんじゃないかと思うくらいの実績のある監督ばかり。
そんな中で本作の監督ベン・ザイトリンは若干29歳で本作がデビュー作ですから、
ダークホースにもほどがあるほどの驚きのノミネートでしょう。
まぁ彼は第65回カンヌ映画祭でも、カメラドール(新人監督賞)を受賞しているので、
並の新人監督ではありませんが、その時のカンヌでパルムドールを受賞したハネケと、
アカデミー賞で肩を並べているんだからまさに時代の寵児ですよね。
でもやはりデビュー作でオスカーを受賞出来るほどアカデミー賞は甘くないようで、
主要4部門でノミネートされながらも無冠に終わりました。

まぁ他の作品と比較して、本作が1部門でも受賞するのは難しいだろうと思いますが、
イロモノ扱いされたことによる不利も多分にあったように思われます。
それは候補4部門のひとつである主演女優賞に端的に表れています。
本作からノミネートされたのは、9歳の子役クヮヴェンジャネ・ウォレスちゃんです。
もちろん主演女優賞候補としては史上最年少記録です。
同時に『愛、アムール』から史上最年長主演女優賞候補者が出た年でもあり、
そのあまりに極端な年齢差が話題になりましたが、もうこれは話題先行で、
おふざけで選出されているとしか思えない状況でした。
クヮヴェンジャネちゃんのノミネートで、明らかに得をしたと思われるのが、
主演女優賞オスカー受賞者のジェニファー・ローレンスでしょう。
彼女も若干21歳の若手女優で、老人が多く保守的なアカデミー会員が、
普段なら彼女に投票するとは思えませんが、まさかの9歳の対抗馬登場で、
投票されやすい状況になったような気がします。
結局彼女は最年少主演女優賞受賞者の史上2番目の記録(タイ記録?)になりました。
異例尽くしの主演女優賞だったわけですが、まともに選んでいるのか疑問ですね。
(あ、ローレンスの演技は素晴らしかったので、受賞自体には納得してます。)

少なくとも、まだ子役であるクヮヴェンジャネちゃんを、
大人の女優と比較しようというのは無茶というものでしょう。
しかも撮影時はまだ6歳だったらしく、天才子役の芦田愛菜ちゃんよりも幼いです。
そんな子どもに受賞させる気がないのも見え見えだし、悪ふざけとしか思えません。
たしかに演技なのか素なのかわからないほどのナチュラルな演技で、
いわゆる訓練された子役とは一線を画す素晴らしい魅力があります。
等身大とでも言うのか、まるでドキュメンタリーのような自然さです。
演技には見えないくらいの演技なので、演技として評価するのは難しいですが、
幼い女の子のピュアさがダイレクトに伝わってきて、
大人になってすっかり荒(すさ)んでしまった心が、洗われるような気分です。
印象だけなら他の候補者を上回る存在感だったように思います。
まぁまだ最後の主演女優賞候補作『インポッシブル』が公開されてないので、
ちゃんと比較出来ているわけではないんですけど…。

クヮヴェンジャネちゃんの演技も含め、強く印象に残る作品だったため、
ボクは本作を高く評価したいですが、実際に内容を理解できたかと言えば自信がないです。
アカデミー作品賞候補の中でも、最もアカデミックな内容で難解だったかも…。
とにかく序盤は全く状況が掴めない展開で当惑していました。
なにしろ主人公の6歳児の目を通して描かれているわけだから、
彼女の世界観が限定的で狭く、全体が見え難くなるのも当たり前です。
そこがまたリアルだとも言えるのですが…。
主人公の女の子ハッシュパピーは、父親と2人で原始的な生活しています。
彼女の村は「バスタブ」と呼ばれ、そのすぐ隣には近代的な建物が立ち並ぶ街があり、
父や村の人はそこを「土手」と呼んで忌み嫌っています。
しかし南極の氷が解け、近々土手より南にあるバスタブは海に沈むようです。
この断片的な状況から、ボクは近未来が舞台のディストピア系SFかと思ったのですが、
どうもそうではないらしく、アメリカのルイジアナ州のバイユー地帯に住む、
バスタブという架空のコミニティを舞台にした現代劇のようです。
邦題に「バスタブ島」なんて書いてあるから、どこかの島かと誤解してました。
文明から離れ失われゆく土地で必死に生きる父子の物語です。

この父子の関係も、はじめは本当に親子なのかも測りかねました。
父親ウィンクは娘ハッシュパピーの食事の世話はするのですが、
その他のことは放任で、彼女はひとり別の家で寝泊まりしています。
嵐が来て怖がっている幼い娘を「泣くな」と怒鳴りつけるし、
甘えてくる娘に対し、父親とは思えないような冷たい態度を取ります。
…実はウィンクは、心臓に病気を持っているようでもう長くはないと悟り、
娘がひとりでも逞しく生きていけるように心を鬼にして突き放していたのです。
ハッシュパピーも幼いながらに何か勘付いているようで、
そんな理不尽な父親のことをとても慕っています。
終盤、強気に振舞っていたウィンクが思わず涙を見せたシーンでは、
この不器用な親子愛に泣けてしまいました。

本作では随所に、オーロックスという巨大な牛が登場します。
南極の氷河の中にいたものが、氷が解けて復活したのですが、
弱った人間を襲う強い動物として、どんどんバスタブに近づいてきます。
しかしオーロックスはすでに絶滅した牛の祖先であり、現在実在しませんし、
氷河で冷凍保存されていたとしても復活するなんてことはもちろんあり得ません。
そもそも草食獣なので人間を捕食したりするはずもなく、
オーロックスのシーンはハッシュパピーの空想だと思われます。
しかし、バスタブにやってっきたオーロックスを、村の子たちも見ていたようで…。
きっと幼いハッシュパピーにはオーロックスに見えるだけで、
実際は何か別なもののメタファーなのだろうと思われます。
考えられるのは「父の死」で、オーラックスが近づいてくるのは、
死期が迫っているというメタファーと捉えるのがわかりやすいけど、
死期だって目に見えるものではないので…。

要するに、ボクには本作の本質的なテーマはわからなかったのですが、
クヮヴェンジャネちゃんの演技も印象的で、表面的な親子愛のドラマには感動できたし、
なんとなくいい映画を観たような気になりました。

関連リンク
アルゴ
レ・ミゼラブル
ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日
ゼロ・ダーク・サーティ
世界にひとつのプレイブック
ジャンゴ 繋がれざる者
愛、アムール
リンカーン

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://blrpn.blog.fc2.com/tb.php/1019-b35d9ee6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad