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藁の楯 わらのたて

来月16日から開催される第66回カンヌ国際映画祭。
10日ほど前にコンペ部門のラインナップも発表され、
日本映画が(19本中)2本もノミネートされていたことで、
日本でもいつになく盛り上がっている印象です。
第64回でも日本映画が2本ノミネートされはしましたが、
そのうちの一本『朱花の月』は所謂メジャー作品ではなかったしね。
(ちなみに『朱花の月』の監督は今回の審査員に選ばれています。)
その点今回は、三池崇史監督・大沢たかお主演の『藁の楯』と、
是枝裕和監督・福山雅治主演の『そして父になる』と、メジャーな注目作です。
これは盛り上がりますよ。

でも正直、日本映画がパルムドールを受賞できるとは思ってません。
ラインナップされたタイトルだけでは全く内容がわからないものばかりですが、
個人的に最有力候補な気がするのはスティーブン・ソダーバーグ監督の
『Behind The Candelabra(原題)』かな。
『ドライヴ』の監督・主演が再タッグを組んだ『Only God Forgives(英題)』、
コーエン兄弟の『Inside Llewyn Davis(原題)』にも注目しています。
ただ、パルムドール作品は面白くないと相場が決まっているので、
期待している作品が受賞したら期待できなくなるんですよね…。

ということで、今日はコンペ部門に選ばれた日本映画の感想です。

藁の楯 わらのたて
藁の楯

2013年4月26日公開。
木内一裕の同名小説を三池崇史監督が映画化したサスペンスアクション。

少女が惨殺される事件が起き、殺人事件の懲役を終えたばかりの清丸(藤原竜也)が指名手配される。清丸を殺せば10億円の謝礼を支払うという新聞広告が出され、身の危険を感じた清丸は福岡県警に自ら出頭。清丸の命が狙われるという状況下、警視庁警備部のSP銘苅(大沢たかお)と白岩(松嶋菜々子)は凶悪犯を移送することになる。(シネマトゥデイより)



近年『忍たま乱太郎』『逆転裁判』『愛と誠』など、
「大丈夫か?」と思うくらいに迷走していた巨匠・三池崇史監督ですが、
前作『悪の教室』に続いて、とても彼らしい作品だったので、
ついに迷走を脱したように思われ、安心しました。
そうそう、彼にはこんな作品を求めているんですよ。
こんな、とはどんなかといえば、ちょっと不謹慎な内容の娯楽作品です。
本作はまさかの全年齢対象作品なので、グロい描写はありませんが、
内容的にはけっこうグロい問題作だと思います。
『ジャッキー・コーガン』や『ラストスタンド』はR指定にするのに、
本作を野放しにする映倫のレイティング制度は、本当にわかりませんね。

7歳の女の子の遺体がドブ川の用水路で発見される女児遺体遺棄事件が発生し、
現場の遺留物(精液)から、清丸国秀が容疑者になります。
被害者の祖父で大富豪の蜷川は、新聞に「清丸を殺した者に謝礼10億円支払う」と掲載。
逃走中だった清丸は身の危険を感じ、福岡県警に自首する。
警察は清丸にSPを付けて、福岡から警視庁まで移送させるが…、という物語です。

本作の勝因は、やはりキーマンである清丸を演じた藤原竜也の怪演でしょうね。
怪演することの多い俳優だけど、そのキャリアの中でも本作はかなりのものです。
幼い女の子を暴行の上、殺害する小児性犯罪者で、
誰もが生理的に嫌悪感を覚えるであろうロリコン野郎の役です。
人気商売の俳優としてはなかなかリスキーな役ですが、
それを躊躇せずにやってのけてしまうプロ根性が素晴らしいですね。
清丸は単にロリコンなだけではなく、大人に対しては拒絶感があるようで、
自分を警護する警察官に対し、「触らないで!オジサンとか気持ち悪い」と発言。
松嶋菜々子演じるあんなに美人な女性SPに対しても、
「オバサン臭い」と吐き捨てるなど、真性のロリコンです。
移送中に逃亡した時も、軒先でパンツ丸出しで寝ている女の子を発見するや、
襲いかかろうとするなど、かなり病的なロリコンですね。
ただ、幼い女の子なら誰でもいいわけでもないみたいで、
新幹線での移送中、新神戸駅で清丸を狙う男が女の子を人質にとって、
清丸の身柄引き渡しを要求しますが、その人質の女の子に対しては、
「不細工なガキだな」と呟き、無関心な様子…。
十分可愛らしい女の子だと思ったけど、なんだかちょっとお気の毒です。

ただ小児性愛者なのかは微妙なところで、暴行と言っても性的虐待ではなく、
殴打しボコボコになった顔面に顔射するという加虐性欲者のようです。
対象は幼くて可愛い女の子だけなので、単なるサディストではないですが、
ちょっと掴み難い設定だと思いました。
単に真性の小児性愛者の方がわかりやすいし、反感も持ちやすい気がしますが、
児童に対する性的虐待を扱うのに躊躇したのかもしれませんね。
(そうなればレイティングもR指定は確実になるし。)
あと意外なところで、この女児遺体気事件の犯人が清丸だと断定もされていません。
7年前にも同じような事件を起こし、最近まで服役していたようなので、
十中八九、いや百中九十九、清丸が犯人だと思われますが、
特に清丸の人間性を理解できる中盤までは、「誤認オチかも?」と感じていて、
彼が犯人ではないなら、作品の見え方が大きく変わってしまうため、
ちょっと物語に入り込み難さを感じました。
できれば端から犯人だと断定できる演出(例えば犯行場面)があればよかったです。

清丸は性的趣向の話だけではなく、口を開けば不愉快なことを言う男で、
自分の身の安全を守ってくれるSPたちに対し、
「あなたたちだけで大丈夫ですか?」なんてケンカを売るような発言も…。
「お巡りさんは高卒だから大変な仕事をさせられて」なんてことも…。
伊武雅刀演じる福岡県警のベテラン巡査部長はともかく、
たぶん警視庁のSPや捜査一課の刑事さんが高卒ってことはないと思うけど…。
そんな自分に不利になるような不愉快な発言を悪気なく言ってしまう
清丸の人格破綻ぶりもなかなか面白いです。

そんな清丸を警視庁に移送するのは、警視庁のSP(警備部)2人と捜査一課の刑事2人、
あと福岡県警のベテラン刑事の計5人です。
任務として清丸を守らなくてはいけない彼らですが、当然清丸には嫌悪感を持っています。
秘密裏に清丸護送を進める彼らですが、なぜかネット上に彼らの位置情報がアップされ、
5人の中に蜷川に情報をリークしている内通者がいるようで…。
それが誰なのかが本作の関心事ですが、なかなかうまく演出されており、
全員怪しい反面、全員シロっぽくて、ボクも予想できませんでした。
まぁ全員怪しいから誰が内通者でも驚きはなかったですが…。
その5人のひとり、永山絢斗演じる捜一刑事は、清丸とは違う意味で不愉快な男です。
清丸に対して敵愾心を露わにするだけでなく、清丸を護衛するSPに対しても反抗的。
警視庁の捜査一課であることを鼻にかけているところもありムカつく若造です。
別の課とはいえ、自分より階級も年齢も上なSPの銘苅に対してあの態度は無いですよ。
また彼は一般人に対しても高圧的な態度を取ります。
移送中の新幹線でも乗客に対し高圧的な態度を取りますが、
その乗客がヤクザ屋さんで銃撃戦になり、彼は被弾し死にますが自業自得ですね。
コイツだけは如何にもすぎて、絶対にシロだと思ったかな。
誰が内通者かは伏せておきますが、あの方法で位置情報を発信しているなら、
途中で救急車に乗り換えた時に探知されなかったのはおかしいですよね。

清丸のことは殺されて当然だと思う反面、蜷川のやり方にも反感を覚えますね。
蜷川は政財界の大物なんて言ってるけど、絶対にヤクザですよ。
黒服を連れてるし、仕込杖持ってるし、絶対にヤクザの大親分ですよ。
ヤクザじゃなくても相当悪どい企業(たぶん金融関係)の経営者なのは間違いないです。
彼は清丸の殺害に失敗した人物を全員、蜷川ガバナンスに契約金1億円で雇いますが、
殺人未遂の犯人を雇う企業なんてマトモなわけがないです。
当然彼も殺人教唆罪に問われるので、この企業が倒産するのは間違いないですね。
また、孫娘を殺した清丸を殺したいという気持ちはわからなくもないけど、
その方法として他人に殺させるというのでは、気が済まないように思います。
どうせ犯罪者になるなら、殺した者ではなくて生捕した者に10億円支払い、
自分で拷問して苦しめてから殺したいと思うのが被害者感情じゃないかな?
他人を使い、撲殺や銃殺や刺殺でアッサリ殺すのは甘すぎます。
それならまだ刑務所で死刑を待つ方が苦しみを与えられるはずです。
まぁ最後に死刑判決を受けた清丸は「後悔してます。もっとやっておけば…。」と、
全く反省もしてないし、死の恐怖も感じていないようですが…。
死ぬのが怖くないなら、身の危険を感じて自首するのも変ですが…。

あと、おそらく一番困難だと思われる都内での移送が、全く描かれないのも不満です。
不満というか都合がよすぎるというべきかな。
都合がよすぎるといえば、余貴美子演じる女性タクシードライバーは一体何なの?
普通の人はいくら金を積まれても人殺しはしたくないのは当然なので、
彼女のように清丸の命を狙わない人物が登場するのはわかりますが、
SPの移送を無償で助けるなんて都合がよすぎるキャラクターです。
名古屋を過ぎたあたりの山道で7年前の事件の被害者遺族に会ったあたりから、
本作は急激に予定調和な展開になった気がします。

楽しめる作品ではあるんだけど、この程度ではパルムドールは絶対無理でしょうね。

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